5月18日(土)美しい新緑の中、午前9時半より、ひと月に一度リビングアカデミー(以下LA)生全員が顔を合わせる「みんなの日」が、緑ヶ丘跡地の校舎2階ホールで行われ、118名(zoom参加2名を含む)が集まった。
はじめに、スタッフの鈴木の司会で礼拝が行われ、讃美歌122番「みどりもふかき」を歌った。
<「忘れられない人々」4期生・飯野順子さん>
「みんなの日」には、毎回最初にLA生のお一人から「忘れられない人々」をテーマにお話を伺っている。今回は4期生の飯野順子さんが「いのち」をテーマにお二人のお話しをされた。
私は、東村山市の重症心身障害者の入所施設「秋津療育園」(昭和33年設立)の理事長を務めている。最重度の8~79歳までの入所者175名に対し、職員は医師6名・看護師80名・生活支援員100名が働いている。
- 若くして亡くなられた諒さん。先月4月19日に天国に召された。仮死状態で生まれ、
6歳から20年間秋津療育園で過ごした。27歳という短い時間であっても、かけがいのない時間を紡いだ一生であった。入所施設のミッションは、その人らしく輝く、人生の履歴を創り、穏やかで温かい、家庭のような生活を提唱することと思っている。今「諒さんのことを、皆さんに聞いてもらいましたよ」と言ったら、いつもと同じく親指を立てて「ありがとう!」と返事をしてくれると思う。
- 余命宣告をされていた服部さん。ターミナルケアとして、がんの痛みの緩和とQOLの
維持に努めてきた。音楽好きで、音に合わせてかすかな声を出して歌ったり、体を動かしていた。アメリカでは、ミュージック・サナトロジーとして終末期の人を対象にハープの演奏をしている。そのことで、共にある空間と時間をつくり、いのちの源が潤うようにしているそうだ。この服部さんが、昨日午後3時に永のお別れになった。「がんばったね。服部さん」
<教養講座「♪人生ハーモニー♪で、楽しく豊かな生活に」野口京子先生>(要約)
今年度第1回の教養講座は野口京子先生(文化学園大学名誉教授・日本健康心理学研究所所長)から「♪人生ハーモニー♪で、楽しく豊かな生活に」と題して講演をしていただいた。
ここにおられる方は、皆さん人生の後半に入っておられると思う。生き方次第で、高齢者でなく幸齢者、後期高齢者でなく光輝幸齢者として生きることが出来る。
- 健康を支える3本の矢
世界保健機構(WHO)では「健康とは、完全な肉体的、精神的及び社会的ウェルビーイング(良い状態)である」と述べている。ここには健康を支える3本の矢が示されている。
- 身体的ウェルビーイングは、具体的に7~8時間の睡眠、朝食、禁煙、規則的な運動、
適正体重、間食をしない、適量のアルコールなどにより実現する。
- 心理的ウェルビーイングの要素とは、目的をもつ、自己効力感、自己尊重、ポジティブ
な考え方、理性的な判断、チャレンジ精神、コントロール感などにより実現する。
- 社会的ウェルビーイングは、社会の一員としての責任、ジェンダーを肯定的に、ソーシ
ャルサポート、社交を楽しむ、人生を楽しむなどにより実現する。
- 健康心理学
人、環境、ものからのストレスによるネガティブな影響が顕著になる中で、健康心理学という研究領域が1970年代に始まった。健康心理学の主要概念として、次のものが挙げられる。
①自分の資源の点検(眠っているDNAにスイッチを入れる)、②高い自己効力感(自分は出来るに違いない)、③柔軟なストレス対処(適度なストレスは有効・固まったストレスを上手に対処する)、④ネガティブな考え方からの速い脱却、⑤明るいコミュニケーション、⑥ソーシャルサポート(助け合い・話し合い)
3.幸せとは
幸せとは、まったくストレスのない環境の中で生きることではなく、様々な困難にも上手に対処することによって、実現するものである。
- アルバート・エリス(米・臨床心理士)の言葉:「人は、人生の目標を掲げ、それに向か
って積極的に前進している時が幸せなのである。理性的であるとは、その前進する力を助ける考え方をすることである」
- 健康心理学における考え:幸せは、困難に出会い、対処しなければならないような状況
であるにもかかわらず、それを乗り越え、希望をもって生きていくことによって辿り着くところ。
以上のようにとらえた「幸せ」をデザインするために必要なものとして、自己効力感、行動変容、ストレス対処、ポジティブな感情/思考/行動、パーソナリティの強さ、心理/身体/社会ウェルビーイングが挙げられる。
- ストレスへの対処法
私たちは、絶えず様々なストレスに晒されている。ラザルス(米・心理学者)は、ストレスに対するレジリエンスを高め、ストレスに対処する方法として次のものを挙げている。
- 計画型…………………熟慮して有効な解決法をいくつも検討する。
- 対決型…………………困難な状況を変えるために積極的に努力する。
- 自己コントロール型…自分の感情を調節して平常の行動を保つ。
- 社会的支援模索型……問題解決のために適切な人に援助を求める。
- 責任受容型……………問題や困難な状況に対して責任をとる。
- 離隔型…………………問題を自分と切り離して考えてみる。
- 逃避型…………………逃げる。
- 肯定的再評価型………困難な体験から肯定的な意味を見つける。
- 自己効力感
心理的なウェルビーイングの重要な様子である自己効力感とは、求める結果を達成するための資質と自分が備えているという信念および有能であるという感覚に基づいている。
自己効力感は、その人の選択、努力、逆境からの回復、ストレスや抑うつを乗り越えるときに影響を与える。
自己効力感が高い人は、成功のシナリオを描き、物事を成し遂げる。個人の目標設定は、能力の自己評価に影響されるので、自己効力を強く認識するほど、より高い目標を設定し挑戦する。
自己効力感が低い人は、失敗のシナリオを描き、多くの事柄が悪い方向へ進むのではないかと考える。重い負担がかかった困難な状況を処理していくように任務を直面すると、考え方は揺らぎ、意気は低下し、作業の質も悪化していく。
自己効力感の育て方には、次のようなものが挙げられる。
①成功体験(何かができるようになったという体験)、②代理体験・モデリング(真似をすることでできるようになる)、③他者からの励まし(他者が肯定的に受け止めてくれる)、④生理的変化の気づき(爽快さ、満たされた感覚に対する気づき)。
5.ポジティブな側面に視点を当てた健康心理カウンセリングの意義
クライアントのウェルビーイングを高めるために大切すべきカウンセリングの要素として次のようなものが挙げられる。
① 個人のポジティブな資質を見出し強調することは、クライアントに活力を与える。
② 困難や弱い部分を見つけて問題点を矯正していくよりも、成長する力に焦点を当てるほうが行動変容の動機を高める。
③ 健康に良いライフスタイルを獲得し維持するほうが、すでに悪いほうに加速度がついて習慣を改善するよいも容易である。
教養講座終了後、LA賛歌を皆で歌った。
<諸報告>
- LA祭、12月の午後の集いのそれぞれの行事の係の発表
- 選択クラス「書道」閉講のお知らせ。
- 最高学部生より能登半島震災支援活動について。
- 創立100周年募金について
<昼食・自己紹介>
初等部食堂で家族ごとにテーブルを囲んで手作りの昼食をいただく。メニューは、まぜご飯、鶏の香味焼き、小松菜もやししめじのお浸し、金時豆の甘煮。
昼食をいただきながら、4月に入学した9期生4名の方の自己紹介(第1回)を伺う。その後、自主活動のお誘いの報告があった。
<午後の集い:家族ごとのミーティング>
午後は13時30分ごろより先月に引き続いて緑が丘校舎の教室とホールを使って、11の家族に分かれてミーティングの時間をとった。家族の目的の「交わりを深める」ためにできることなどをそれぞれ考え、具体的な計画を立てられた家族もあった。15時前後までに散会した。