ポーランド研修便り(4)/学生生活・学外活動 - 自由学園 最高学部(大学部)/ 最先端の大学教育

ポーランド研修便り(4)/学生生活・学外活動 - 最先端の大学教育【自由学園 最高学部(大学部)】

学生生活・学外活動

ポーランド研修便り(4)

2024年6月13日

ポメラニアン大学での貴重な1週間の交流を終えて、この研修旅行も後半になりました。
ここで出会った現地の学生とは、きっとこれからも親しく繋がっていくことでしょう。
授業やワークショップを通して、寮生活や食事を通してお互いを理解しようとしたことは、双方の学生たちにとってかけがえのない時間になったと思います。
丁寧にサポートしてくださったポメラニアン大学の教職員、学生の皆さんに心より感謝します。

ここからの1週間は、なぜ私たちが今ポーランドに来るのか、という問いを探求することになります。


学生の日報より
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6月8日(土)

「日本人であること」を強く意識した一日だった。
日本人であること、それはある面では誇り高きことであり、ある面では負うべきことであり、メンバー9人全員の共通点でもある。顔のパーツや体型、そんなディテールでは誤魔化すことのできない「何か」があるのだろう。

今日は、ポメラニアン大学に別れを告げる日だった。
駅まで見送りに来てくれた学生たちと、それぞれが何度もハグをし、写真を撮り、see you again someday、と言い合った。全員が目に涙を浮かべ、その後のInstagramでは、感謝とともに写真を送り合った。

  


それらを通して私は、あぁ、ちゃんと私たちと現地の学生はちゃんと分かり合えたのだなと安堵した。
私たち日本人グループは団体で、それぞれが会話をする時はもちろん日本語を使う。現地学生がそばにいる時も日本語を使う。もちろん私たちの英語スキルが十分でないこともあるけれど、言語を変えるだけで異国間でのコミュニケーションが叶わなくなり、大きな隔たりができると思っていた。実際私は、現地学生がポーランド語で会話している様子を見てから、日本語での会話を始めていた。

日本を忘れて、もっとポーランドに溶け込めたらいいのに。私1人であったなら、もっと違う会話も生まれたのだろうか。現地学生同席の場で、日本メンバーと日本語で話すことに、ずっと抵抗を感じていた。

しかし大学での5日間を振り返ると、私たちは9人だからこそ、私は事務的なことを考えず英語に集中でき、大掛かりなプランに参加させてもらうことができ、何より「日本人」として見られることができた。

普段私たちも街で異なる人が集団で歩いていると、なんとなくどこの国の人か想像できるように、私たちも道すがら密やかに交わされる「ヤーパン」と言う声を聞いた。ポーランドはアメリカ的多民族国家には見えない。それだからか、日本人が日本国内で外国人を見る目と、同じものを感じた。日本人だと見られること、英語がどんなにできても、国際的な友人がどれだけいようとも変わらないことである。

スウプスクからグダンスクへ鉄道で移動後、第二次世界大戦ミュージアムを見学した。
1939年にドイツ軍がこのグダンスクへ侵攻したことにより開戦した第二次世界大戦をテーマにした壮大なミュージアムだった。
展示は、WWⅠ後からヒトラーの君臨、ソビエト・ドイツの対立、戦禍のポーランド、戦争の終結と続いた。世界がファシズムに飲み込まれる流れの中、「八紘一宇」と大きく掲げられたブースがあった。
ドイツに続きイタリアや日本でもファシズムへの賛同が起こる。
ヨーロッパにおいて、それらとソビエトの対立は、やがてポーランドを分断する。私が今立っているポーランドは、ひいては日本も含めたファシズムによる被害国と言えるのではないか。

英語のキャプションも十分には理解しきれないだけ、展示物・映像・音楽・展示ブースの照明、温度、空気感、周囲の観覧者の会話などすべてが心に切に迫った。
日本による加害の歴史の展示の前で、私は1人猛烈な非難を受けている気がした。瓦礫に佇む少年少女たちの写真に、亡くなったユダヤ人の顔に顔向けできなかった。
展示は終戦へと向かい、広島・長崎への原爆投下についても取り上げられていた。
多くの人命を無に帰し、祖国ポーランドを打ち倒した国々。戦勝国と敗戦国、そして戦前・戦中・戦後と続く粛清。戦争としては至極真当な流れに震えた。

ポーランドの日々はあと数日。しかし日本人としての生活は続く。この経験が私に何をもたらすか、期待に胸が膨らむ。
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第二次世界大戦ミュージアムにて

 
昨年の前期課程研修旅行で長崎を訪れた学生が、その時の印象と違う眼差しを語りました。
ここからの1週間、感じ方も捉え方も違う学生たちが、それぞれどのような問いと向き合い、どのような気づきを得るでしょう。

文・写真:咲花昭嗣(最高学部教員)・松島希実(最高学部3年生)

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