自然誌・環境グループよりシモバシラの報告/学生生活・学外活動 - 自由学園 最高学部(大学部)/ 最先端の大学教育

自然誌・環境グループよりシモバシラの報告/学生生活・学外活動 - 最先端の大学教育【自由学園 最高学部(大学部)】

学生生活・学外活動

自然誌・環境グループよりシモバシラの報告

2007年3月22日

春分を迎えた学園内には春植物が咲き、木の芽がほころび始めました。私たち自然誌・環境グループの2年生は、2005年9月からの1年半の活動の中でシソ科のシモバシラという植物の観察を続けました。毎年、自由学園で冬の訪れを感じさせられる自然現象の一つが、シモバシラに見られます。この植物は、朝方気温が低下した時に枯れた茎(花茎)の根元に地中からの水分で氷の結晶があらわれます。2005年、2006年の二冬を振り返ってみると、シモバシラの氷の結晶の出方には私たちが見てきた二冬の間で大きな違いが見られました。


まず、昨冬初めてシモバシラに氷の結晶が現われたのは、2005年12月14日でした。最も高いもので地表から16cmあり、この日の最低気温は-4.2℃でした。一方、今冬初めてシモバシラに氷の結晶が現れたのは、年が明けた2007年1月1日でした。最も高いものでも高さ12cmしかありませんでした。この日の最低気温は-1.5℃でした。
昨冬はシモバシラの茎にできる氷の結晶の高さを3茎について測定しました。2005年12月16日をピークにして、10日後には約3分の1、20日後には約4分の1の高さと、氷の結晶が低くなっていきました。また、結晶のできた茎の本数は、10日後には約3分の2、20日後には約3分の1の本数になりました。
気温の点からみると、昨冬2005年12月の日最低気温は12月中旬以降、ほとんど毎日、零下でした。今冬、2006年12月は日最低気温が零下になった日は1日もなく、日最低気温の月平均は4.0℃でした。また、12月の月平均気温を比較すると、2005年は4.0℃、2006年は7.8℃と、今冬は約3.8℃高くなっていました。このことから、2007年1月になって初めてシモバシラの茎の氷の結晶ができたのだと考えられます。
また、シモバシラの枯れた茎のうち、氷の結晶のできた本数を比較すると、昨冬は2005年12月16日が175本で最多でした。今冬は、最多数が81本と半減し、氷の結晶が現れた日数も少なかったです。これは、気温のほか、乾燥が強く地中に水分が少なかったことも関係していると考えられます。
  シモバシラ   シモバシラ
   (左)2005年12月16日(右)2005年12月16日
  シモバシラ   シモバシラ
   (左)2007年1月9日(右)2007年2月27日
生きている植物体への気候の影響はもっと複雑です。2006年秋にシモバシラの花茎の本数が半減したことについては、さらに多くの要因が関係していると思われます。生物が季節の推移のなかに変化する様相をシモバシラをはじめとして、実際に自分たちの目で見て確かめ観察記録し考えてきました。これらを通して自然の奥深さを感じられる学びができました。
注:気温は自由学園気象観測記録による。

文と写真:竹島 綾(学部2年)

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