講義「日本の里山・里川・里海と地域デザイン」で三浦半島・小網代の森を見学/教養・専門 - 自由学園 最高学部(大学部)/ 最先端の大学教育

講義「日本の里山・里川・里海と地域デザイン」で三浦半島・小網代の森を見学/教養・専門 - 最先端の大学教育【自由学園 最高学部(大学部)】

教養・専門

講義「日本の里山・里川・里海と地域デザイン」で三浦半島・小網代の森を見学

2024年5月25日

5月19日(日)、最高学部の講義「日本の里山・里川・里海と地域デザイン」の見学として、三浦半島の「小網代(こあじろ)の森」の見学を行いました。本講義では、里山をはじめ具体的に地域をとらえる原単位として、既存の行政区域ではなく、自然地形に由来する「流域」という概念に注目していくこととし、課題図書として全員で岸由二氏の『「流域地図」の作り方―川から地球を考える』を読みました。
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小網代の森の入り口にて

 

小網代の森は、三浦半島の南端(神奈川県三浦市)に位置し、相模湾に面する広さ70haの森です。谷に沿って流れる浦の川を中心とした一つの流域として、森林、湿地、干潟及び海までのエコトーンが連続して残されており、神奈川県が小網代近郊緑地特別保全地区に指定しています。この見学の目的は、岸氏が保全に関わり、先の文献でも紹介されている、理想的なモデル流域としての「小網代の森」に実際に足を運び、自らの五感を使って「流域」を体感すること、里山・里川・里海の連続性を確認することです。

当日は京急久里浜線の三崎口駅に集合し、路線バスで現地へ移動しました。地形や植生、水辺の様子などを観察しながら、時間をかけて上流から下流へと歩きました。干潟に到着し、カニ類、磯の生物の観察などを行っている間にもみるみる潮が満ちてきて,海辺にいることを実感しました。干潟から少し上がった林の斜面ではアカテガニが巣穴から姿を現し,課題図書で読んだ生物たちの様子も確認することができました。エノキテラスでお弁当をいただき、最後は小網代湾の様子を見ながら油壺方面に抜け、路線バスで再び三崎口駅に戻って解散しました。

 

整備された小網代の森を歩く

 

小川沿いの植物を観察する

 

参加した学生からは「今回歩いた小網代では、植生が上流から下流にかけてとても大きく変化しているという印象を受けた。それは小網代流域が独立した一つの流域であるということに起因しているからだろうか?また、小網代ではアカテガニをアンブレラ種としているがアカテガニの保全によってどれだけの植物が守られているのか、またササ刈りや樹木の手入れなどにどこまで人の手を加えることが良いことか、ということも考えさせられた」、「普段はどこか一部分ばかり見ている川が、細く狭い上流から下流に行くにつれ広く広がっていく様子を一気に見る事ができ面白かった。川の流れの速さや幅だけでなく、その周囲の植生もそれに合わせて変化していっているのも興味深い。植物はどんな環境でも生えられるわけではなく、自らに合った環境があるのだという事を短いルートの中で感じる事ができた。また、この広い湿地は背の高いササに覆われていたところから始まり、再生や保全活動の末に今の姿があるという事にも驚きである。見学当日もボランティアの方が草刈りや整備の手伝いを行っており、皆で大切に保全の取り組みが続けられている場所であるのだと感じた」、「講義で流域という言葉を何度も聞いていたが、実際に歩いて流域を感じることができた。最近はどこにいくにもスマホの地図と睨めっこだったが、この見学では周りをよく見て、地球を感じながら散策することができた」、「いつもは行かない場所に実際に行くと植物や動物など、そこでしか見られないものにたくさん出会うことができ、常に探究心やワクワクと共に1日を過ごした。フィールドに出ると知識として存在していたものが自分の中に体験として蓄積されていくことを改めて感じた」といった感想が聞かれました。

 

河口の干潟に到着

 

次回は南沢キャンパスも包含されている「荒川流域」を概観する見学を予定しています。引き続き、フィールドと教室の往復を通して、抽象的な概念を具体的なイメージへと変換して行きます。

 

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文・写真:小田 幸子(最高学部教員・環境文化創造センター次長)・写真:丸原 歩(最高学部3年)

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