人の信頼を裏切らない仕事を

人の信頼を
裏切らない仕事を

田積 まどか
Madoka TATSUMI

SAPジャパン ユーティリティデジタルトランスフォーメーションオフィス シニアディレクター

女子部 63 回生

2017年10月12日談

SAPジャパンのオフィスにて。

エネルギー業界のデジタル化を推進

 SAPジャパンというドイツに本社を置くヨーロッパ最大のIT企業の日本法人に転職して、丸2年。自分で立ち上げた「ユーティリティデジタルトランスフォーメーションオフィス」で電力やガス業界のデジタル化を推進する役割を担っています。

 

日本国内では一般の家庭でも2016年に電力会社、2017年にガス会社を選ぶことができるようになり、エネルギー業界の市場構成が変わってきました。以前は東京に住んでいる人はみんな東京電力、東京ガスでしたよね。競争社会になったため、当然マーケティング活動をしなければならないし、料金やメニューにも幅を持たせる必要が生まれています。

 

また、各家庭で太陽光発電やコージェネなどさまざまな小規模発電もできる時代です。今までは一気に発電所を作って電気を流すだけでしたが、電力の使い方やネットワークは非常に複雑になっています。

 

かつて日本の電力・ガス企業は、安定供給にもっとも力を入れてきました。でも今後は料金を下げ、人手とお金と時間をかけて守ってきた安定供給の仕組みを変えていかなければなりません。天気によって発電量を予測し、情報をとりまとめ、効率的な電力の運用をする必要がある。そこでITの出番になるんですね。

 

諸外国は最初からITを使うことで、日本の安定供給や品質の高さにどんどん追い付いています。日本企業がデジタル化を進める中で、どのようにITを活用していけるのか。海外での取り組みなどをお伝えしつつ、提案するのが私の役割です。

転職は4回。ずっと電力業界に関わってきた。

グローバルカンパニーで働くということ

 転職して2年ですが、電力会社とのお付き合いは以前働いていた日本オラクルのときからなので15年になります。会計システムや人事システムの導入に始まり、さまざまな取り組みをITで支援させていただきました。

 

その後、コンサルティング会社に転職、再びオラクルに戻ると、今度はSAPへの転職の機会を得ました。外資系企業は報酬も大きいのですが、成果を出さなければいけません。今の自分ができる最善の仕事は何か。できることを考えながら転職をしてきました。 日本企業では、自分の担当業務以外の発展的な働き方は難しかったけれど、ここではやりたいと思うことはたいていトライできます。グローバルメンバー(諸外国にいる社員)に協力してもらって、チャレンジできる環境は大きいですね。

 

今はSAPのソリューション(問題解決のシステム)に寄り添いながら、デザインシンキングの考え方で働いています。かつてはいいシステムさえ作れば、どんな企業にも「これに合わせてやってください」と言うことができました。しかしもう大抵のシステムは整っている時代です。お客様にとって何が嬉しいのか、どんなサービスがあればいいかを見つけて提案しよう、というのがデザインシンキングです。

 

たとえば日本の電力会社がドイツの電力会社と話したいと聞けば、それをつなぐこともするし、その逆もあります。人と人とをつなぐ役割も大事な仕事なので、信頼を裏切ってはいけないといつも考えています。

世界中の社員とのネット会議も多い。

何よりもコミュニケーションが大事

 自由学園を卒業してすぐ、日本の企業に就職し経理や経営企画に携わりました。パソコンが出たばかりでIT関連の仕事は一段低く見られていた時代。会計システムの入れ替えもやる人がいなくて、若い私が担当兼責任者でプロジェクトを進めました。

 

30代半ば、友人に「あなたみたいな性格の人は外資が合ってるよ」と言われて転職コンサルタントに登録。会計システムを動かした経験を買われ、転職の道が開けました。

 

学生時代には今の自分は想像できませんでした。だから、若い人には早くから将来を限定しなくてもいいと言いたいですね。

 

ただし、英語はちゃんとやっておくべきです。私は苦手なので、メール一本書くにもどれほど時間がかかるか。でも、できないからといって萎縮はしません。やる気を見せれば、どんな英語でも理解してもらえます。

 

SAPに転職してすぐ、「ドイツ本社に行っておいで」と送り出されました。たまたまヨーロッパ中の電力会社の重役が集まる会議があり、「日本のマーケットについてプレゼンしてほしい」と急に言われました。前夜、彼らとの食事会で「英語は得意じゃないけど、明日は台本を見ながらベストを尽くすから質問しないでね」と言いました。

 

翌日、プレゼンをしたら質問の嵐! どうにかやり切ったら大拍手で「君の英語はすばらしかった」と電力会社の方々に大げさに褒めてもらいました。以後、世界各地で彼らと再会するたびに声をかけられます。

 

IT企業はパソコンに向かって働くイメージかもしれませんが、ソフトウエアを買っていただくには、人と向き合ってコミュニケーションを取り、問題解決をしていくことが何より大切です。「物事を組織だてて考えること」「よく人と話し合うこと」。この2つは学園で学んだ経験が大きく生かされていると感じます。

田積 まどか(たつみ まどか)

1965年生まれ。1985年自由学園女子最高学部卒業。株式会社日鉄ライフ(現・新日鉄興和不動産)、2001年日本オラクル株式会社、2006年べリングポイント株式会社(現・プライスウォーターハウスクーパース)、2010年日本オラクル株式会社などを経て、2015年SAPジャパン株式会社へ。公益事業者のIOT活用、日本市場のデジタルエネルギーネットワークへの対応を推進するユーティリティデジタルトランスフォーメーションオフィス設立。責任者に就任。