品物と共に思い出も持ち帰っていただく

品物と共に思い出も、
持ち帰っていただく

大嶋 桃子
Momoko OSHIMA

49AV.junko shimada 日本橋高島屋店店長

女子部 83 回生

2016年10月15日談

お客様一人ひとりのライフスタイルをさりげなく伺いながら、商品をおすすめしています」と大嶋さん

それぞれの接客方法

 ジュンコシマダというブランドのお店で販売員をしています。今は日本橋高島屋店の店長です。

学園の最高学部の時にフランス語を勉強し、パリコレクションに興味があったこと、成人式の時に母が買ってくれたのがジュンコシマダのお洋服だったことなどから、試験を受けました。

 

入社後、2日間研修があり、その後すぐに玉川髙島屋店に配属されました。今は違いますが、当時はすぐ現場に出されて、仕事に関することはすべて実地で学んでいく形でしたね。最初は、在庫管理や棚卸など裏方の仕事を主にしながら、だんだんにお店にも立つようになりました。私が最初に販売したのは水玉模様のニット。今でもよく覚えています。4月2日に配属になって、ニットがようやく売れたのが4月20日頃でした。

 

仕事では、個々の売り上げのノルマがあります。最初は担当するお客様がいないのでなかなか達成できませんでしたが、お礼状を出したりお電話をしていたら、だんだんとお客様がついてくださるようになり、3年目くらいからは達成できるようになりました。

このブランドの主なお客様は50~60代の方ですが、私は話し方がゆっくりなので、そういう年代の方の接客が自分に合っていたようです。

 

接客方法は、店員それぞれに違いますが、1年目は、定期的に店舗にくるマネージャー(店長の上の役職の人)から「もっと積極的に売って」と言われて、その通りにしたこともあります。でもあまりうまくいかなくて。その後、自分はお客様の希望をよく聞いてから一緒にお洋服をさがす、というスタンスが合っていることに気づき、今もその姿勢で接客をしています。

 

お付き合いが長くなると、お客様のお嬢様が結婚されたり、お孫さんが生まれてお宮参りに行かれるなど、大事なシーンで着るお洋服を選んでいただくこともあります。そういう場面で協力できるのは嬉しいですね。

店長になって見えたこと

 入社5年目でサブ店長になり、2013年11月には店長になりました。もともと他の店でサブをしていたのですが、ある支店のスタッフがそれぞれの事情で全員退職してしまい、その後に来た店長も体調を崩してしまいました。

 

それで、以前そのお店にいたことがある私が異動して店長になったのです。とはいえ、スタッフもこのお店が初めての人ばかりで何もわからず、1年目は販売促進計画を立てるだけで精いっぱいでした。ダイレクトメールの切手代やイベントのプレゼント代など、「これだけ売りますので、この予算をください」と計画を立てるのです。実際に販売した後は売上実績を見て、目標額が達成できなかったときは原因を考え、次に生かします。

 

スタッフみんなが気持ちよく仕事ができるようにするのも、店長の役割の一つです。2年目からは少し全体を見る余裕も出てきました。そのお店は、20代、40代、50代のスタッフが1人ずつ。私も入れて4人でしたが、その中に自分の営業成績だけを上げようとする人がいました。他の担当者のお客様もとってしまうのです。

 

私は、自分がお洋服を売ったとしても、ストック場から必要な商品を持って来たり接客を手伝ってくれるスタッフや、さかのぼれば商品の企画や生産に携わった人がいるからこそ売れるわけで、自分一人の実力だなんて考えたことがなかったので驚きました。そして、ガツガツしている店員がいる店はその雰囲気がお客様にも伝わってしまい、お店全体の売り上げも伸びないと思いました。

 

そこで、私は自分から、以前担当したことのあるお客様でも、次にいらしたときに話していたスタッフのほうが相性がよさそうだったらその人にお願いし、忙しそうな人を積極的にサポートしました。すると「私が私が」と売っていたスタッフもだんだんとそれを理解してくれて、同時にお店の売上目標も達成できるようになっていきました

お店で買う意味

 今は、百貨店を訪れてくださるお客様の数が減ってきています。買い物の仕方のバリエーションが増え、お洋服もオンラインショップで簡単に手に入る時代になりました。便利ではありますが、「お洋服を買う」という目的だけで終わってしまうオンラインショップに対し、リアルな店舗だと、そこに1人のスタッフが入って人から買うので、満足感が違うと思います。お洋服を売ってはいますが、実際にはスタッフのファンになっていただいている部分もあると思います。

 

お店で、スタッフといろいろな話をしながら、一緒に希望のお洋服を探して購入する。それは、品物と一緒にその時間と空間の思い出も持ち帰っていただくことです。だから、お店全体の雰囲気もとても大切なのです。

 

一緒に働く人が協力すれば、2人いたら2倍以上、5人いたら5倍以上のよい結果が出ます。それは学園でたくさんの行事の運営を任されたから、自然と自分の中にしみこんでいる考え方なのかもしれません。

大嶋 桃子(おおしま ももこ)

1984年生まれ。2007年自由学園最高学部卒業後、(株)ジュンコシマダジャパン(現(株)クロスプラスリテール部門ジュンコシマダ事業部)入社。玉川髙島屋店へ配属。その後、池袋東武店、松屋銀座店、新宿高島屋店へ配属。12年にサブ店長、13年11月に日本橋高島屋店店長になり、現在に至る。