仕事も遊びも本気 ワクワク感は自分でつくる

仕事も遊びも本気
ワクワク感は自分でつくる

草間 祐輔
Yusuke KUSAMA

日本経済新聞社

男子部 54 回生

2019年6月8日談

東京・大手町にて。

今、大学院で学ぶ意義

 この春、早稲田の大学院に入学しました。社会人が働きながら通えるMBA(経営管理修士)コースです。40歳を過ぎて海外転勤から帰任し、2人目の子どもも生まれ、この先何をすべきか考えました。卒業後、日本経済新聞社に入り、学歴で苦労をしたことは一度たりともありませんが、ここで体系的に何かをきちんと学んでおくことは有益だと。今の新聞業界は非常に厳しい状況にあり、この閉塞感がどうにかならないかという思いもありますし、1学年200人が学ぶ大学院は様々な企業の人がいるので、人脈作りも魅力でした。

 

授業は平日夜間(19‐22時)と土曜日。「仕事は大丈夫?」とよく聞かれますが、確かに究極のタイムマネジメントが必要となります。帰宅は23時頃で、そこから課題やレポートをこなすのは大変ですが、なんとか両立できています。

 

MBAでは様々な必修科目もありますが、ゼミは「競争戦略」を選びました。まさに今、新聞社が学ぶべきことだと思ったからです。先生はボストンコンサルティングの日本のトップだった内田和成教授。企業がコンサルティングを依頼すると莫大な費用がかかりますが、そのノウハウや考え方を学べる価値は本当に大きいです。先日、前期の成績が発表されましたが、意外とよかったです。上位20%くらいに入っているかと思います。自由学園は詰め込み勉強をしないので大学入試には不利ですが、仮説を自分で考え、それを論理的に説明して積極的に議論するという大学院の教育には向いているのかもしれません。

「社内では自由学園の卒業生が何人も活躍しています。」

時代の流れを読みつつ企画を提案

 今、デジタル化の流れで世界中の新聞社が苦境です。日経は電子版の有料読者も増えており、何とか健闘していると言えるでしょう。それは経済新聞という際立った個性があるからだと思います。でももちろん、本当の競争はこれからです。

 

入社以来20年、広告の営業を担当しています。2013年からの3年間はシンガポールに赴任しました。当時はアジアの時代到来と言われていたので、希望に胸を膨らませて赴きましたが、最初の1年目は広告のオーダーがほとんどなく、1人で途方に暮れました。ただ、アベノミクスの影響で企業の業績が急速に上向き始めていたので、「広告獲得のチャンスがあるとすれば、日本企業を誘致したいアジア各国の投資庁だ」と察してしつこくアプローチし続けました。

 

最初に実ったのはタイ政府で、日経との共催でバンコクで大きな経済フォーラムを開催しました。こちらが頼んだわけでもないのに、プラユット首相も来て45分講演してくれました。その後も各国政府を訪問し、「タイは日経とこんなことやりましたよ」とプレゼンすると、シンガポール、マレーシア、インドネシア、インドと、次々に日経での広告展開が決まり、この頃は仕事が楽しくて仕方ありませんでしたね。

社内の同僚とバンドを結成。中央でサックスを演奏するのが草間さん

何事も楽しく本気で

 自由学園で英語の成績はよかった方ですが、入社直後、同期の中で英語の成績が最低レベルでショックでした。それでも社内留学制度に応募したくて、TOEICのスコアをそれなりのレベルまで持っていきました。29歳でニューヨークの広告会社にて1年間研修する機会を与えられ、そこでの成果も認められて海外転勤のチャンスも巡ってきたのだと思います。今回の大学院進学もそれなりに大変だったのですが、ワクワク感の方が先行していたので、あまり苦ではありませんでした。

 

世の中では、「面倒なことはやらなくてよい」というのが自由だと見る風潮もありますが、自由学園は逆ですよね。「いくらでも本気で努力していいですよ」という自由だと。私はそう解釈しています。中等科1年での寮生活はつらかったですが、先々の楽しいことを自分で仕込んでいけばよいのだと中等科3年生のときに気づきました。偉大なる発見です。その後は最高学部を卒業するまで、サッカーやブラスバンド、一人旅、毎日新聞の学生記者など色々と熱中しました。

 

社会人となり、会社では仕事以外の楽しい話題はNGなのだとしばらく思っていましたが、大阪転勤中に会社の同僚15人を誘って「六甲全山縦走」に参加してみると、「若いやつが面白いことをやっている」と会社の役員に褒められました。8年前には会社の同僚と9人組のバンドを結成し、毎年大きなライブイベントを自分で主催。サッカーではシニアカテゴリー(40歳以上)で東京都1部リーグのチームに所属して元Jリーガーや元日本代表とも対戦しながら、学生時代に果たせなかった全国大会出場の目標を追いかけています。

 

仕事でも遊びでも自分がワクワクする企画を立てれば、自然と周囲の人も巻き込まれていきます。いつのまにか周りが喜んでくれている。これが自由学園の精神だし、考えてみれば18歳の頃の自分と何も変わっていないですね。妻には「何を目指しているのかわからない」と笑われますけど。

「相手も自分もワクワクする企画を用意したい。」

草間 祐輔(くさま ゆうすけ)

1976年生まれ。自由学園最高学部卒業後、日本経済新聞社入社。営業職として神戸・大阪勤務、ニューヨークの広告会社での研修、シンガポール勤務などを経て、現在はメディアビジネス・ クロスメディアユニット営業部次長。