0から1を生み出す創造性を

0から
1を生み出す創造性を

菰田 敏行
Toshiyuki KOMODA

日本アイ・ビー・エム株式会社 アドバイザリーITスペシャリスト

男子部 67 回生

2019年4月15日談

東京中央区にあるIBM本社にて。

ITスペシャリストという仕事

 学部生のころから、校内のゴミ管理システムを作るなど、パソコンでさまざまなプログラミングをしていました。就職するならそういう仕事がしたいと思っていましたが、当時は就職氷河期。進学を考えていたところ、学部3年になったある日「やっぱり就職しよう」と思い立ち、IT企業を10社ほど受けて日本アイ・ビー・エム(以下IBM)に入社しました。

 

IBMはITを活用して、世の中の様々な課題を解決する会社です。コンピューターに関連する沢山の製品やサービス、コンサルティングを提供していますが、私はその中でITスペシャリストという職種で仕事をしています。

 

顧客企業に対して業務を効率化するためのソフトウェアを導入し、業務に使えるようサポートするのが私の役割です。クラウドを効率よく使えるようにしたり、お客様対応を行うためのサービスデスクの仕組みを導入したり、新しい機能のテストやリリースを自動化したりなど、その内容は多岐に渡ります。

 

SNSや通販サイト、動画サイトなどのサービスを利用していると、新しい機能が次々に追加されていきますね。しかし、それらのシステムが24時間停止することはありません。サービスを停止しないように新しい機能をリリースするためには、意外と考えるべきことがたくさんあります。そうした裏側で、必要なソフトを提供し、技術面でサポートし、問題があれば対応するのが私の仕事です。

2014年、ラスベガスで開かれた米本社のイベント。(本人提供)

コンピューターは、ひらめかない

 IBMのソフトウェアは、日本を含む世界中で開発されています。仕事で扱うソフトの数は、10種類ほど。長年使われている定番製品もあれば、新しい技術が盛り込まれた挑戦的な新製品もあります。いずれにしても、その製品がわかっていないとできない仕事なので、勉強は欠かせません。社内でも勉強の仕組みは充実しているので、気になるワードを調べ、トレンドを追いながら、常に自分で学んでいます。

 

最近は、「AI(人工知能)」が流行り言葉のように注目されています。IBMではAIについて「コグニティブ(Cognitive:認知)」という言い方をするのですが、人間の頭脳に置き換わるものではなく、あくまで情報を引っ張ることを「手伝う」という考え方です。AIにできることはかなり高度になっていますが、仕事を効率よく進めたり、業務の手助けをしたりする位置づけは変わりません。

 

AIは名画をたくさん読みこんで絵を描いたり、音楽を入れて作曲したりしますが、それは基になるデータがあるから。コンピューターは、0から1を生み出すことはできません。与えられたデータを処理し、人間が一生かかってもできないほどのすごい計算を一瞬でしてしまいますが、コンピューターはひらめかない。創造性がないんです。

 

これからは、創造性の部分で人の価値が発揮される時代です。想像力やひらめきは、より重要になって来るのではないでしょうか。自由学園の生活は、自分で考え自分たちで作り上げる、まさに0を1にする創造性が問われることの積み重ねだったと思います。IBMでも、創業当初から「THINK」という言葉を社是としています。自由学園で身についた自分で考える力は、仕事に生きていると感じます。

自分で考え、行動することが求められる仕事。

情報はグローバルに見る

 今は裁量労働制の仕事なので、自分の裁量で好きな時間に働いています。たいてい会社に来ていますが、家で働いてもいい。顧客先に作業をしに行くことも多いのですが、ワーク・ライフ・バランスを考えながら仕事ができる環境が整っているため、健康的な生活ができています。

 

仕事をしていく上で、想像していた以上に英語は重要です。製品の不具合や機能改善の要望などがあった時には、自分で海外サポートに問い合わせたり、営業スタッフと一緒に海外の開発部門に連絡して、機能を改善してもらうこともあります。

 

社内言語は日本語ですが、製品マニュアルは英語。扱う製品がグローバルなので、情報も英語でグローバルに調べるのが当たり前です。米国へ出張した際には、全世界のユーザーが集まるもイベントで、お客様事例を発表したこともあります。仕事で英語を使ううち、身についてきた部分は大きいですね。学部生のとき、興味のある英語の本を読んだり、好きな映画を英語字幕で見て勉強したことも役立っています。

 

入社して8年。今後はもっと技術面を追求していきたいと思っています。米国本社では毎年世界中から人を集めて大きなイベントを開き、新しい技術を使ったサービスや製品を発表しています。その技術をキャッチアップし、お客様にちゃんと使ってもらうことが、この仕事の醍醐味。技術がどんどん普及すれば値段は安くなり、また新しい技術が生まれていきます。この繰り返しで時代は進んでいきますが、その中でしっかり自分の役目を果たしていきたいですね。

菰田 敏行(こもだ としゆき)

1989年生まれ。自由学園最高学部卒業後、2011年に日本アイ・ビー・エム株式会社にITスペシャリストとして入社。現在は同社のソフトウェア&システム開発研究所に勤務。